可動域 制限 |
臥位で 改善 |
SSP テスト |
外旋 テスト |
内旋 テスト |
Napoleon テスト |
|
拘縮肩 | あり | なし | 陽性 | 陰性 | 陰性 | 不可 |
腱板断裂 (~3cm) | なし | なし | 陽性 | 陽性 | 陰性 | 陰性 |
腱板断裂 (3cm~) | あり | あり | 陽性 | 陽性 | SSC 大断裂 |
SSC断裂 |
肩OA | あり | なし | 不定 | 不定 | 不定 | 不定 |
インピンジメント症候群 | なし | なし | 陽性 | 陰性 | 陰性 | 陰性 |
「認知症と意識障害」
名古屋フォレストクリニック 院長 河野 和彦 先生
河野先生は毎年、400人を越える認知症の患者を診察し、クリニックのホームページでは認知症ブログを書き続けるなど、認知症への理解を広める取り組みを積極的に展開しておられます。その方法論は河野メソードとよばれ、最新著書として今回「高野メソードで見る認知症診療」(日本医事新報社)を上梓されたばかりであります。今回、河野を講師に招き「認知症と意識障害」についてご講演いただいたので、その要約を以下に報告いたします。
「認知症は10年で倍増する。」と考えていた厚労省は読み違いであり、認知症は急増しており、認知症爆発は明日にでも起こる。認知症はあなたの外来にも必ずいるはず。現在、75歳以上の5分の1が認知症と考えられる。判別するにはぜひ改訂長谷川式スケールの習得を推奨された。このスケールの盲点として、1)認知症を確定するカットオフポイントが無いこと。2)スコア1桁の患者は必ずしも重度ではないこと。3)スコアが低い認知症患者がいる点、を指摘された。具体的に、加齢と認知症の違いを買い物、料理、薬、怒る、排尿行為等の例を出しこういう言い方ならわかるでしょと解説された。ここまでが一般論であり、今回の講演のテーマの一つとして、まず認知症の概要を話された。大前提として認知症学は未完成のため、役に立たない約束事があること。例えば、「意識障害のある時に認知症と確定してはなぬ。」に対して、「現実には、1部の認知症はせん妄を合併している。」などの例をあげられ、新たな認知症学の構築が必要であることを強調された。また、注意事項として、内科疾患では、甲状腺機能低下症、ビタミンB12欠乏症、ビタミンB1欠乏症(ベルニッケコルサコフ症候群)など。脳外科疾患では、正常圧水頭症、硬膜下血腫などのtreatable dementiaのルールアウトが重要で、見落とすと裁判では負ける旨説明された。次に、認知症の分類を、変性性認知症と二次性認知症に分類し、前者では、アルツハイマー型認知症(ATD)、レビー小体型認知症( DLB)、前頭側頭葉変性症(FTLD)、ピック病、意味性認知症があり、後者は主に脳血管性認知症(VD)が該当する。各認知症の症例提示がなされ、その特徴と診断手段なとが丁寧なスライドにより説明された。
次に今回のテーマである、認知症と意識障害について講演された。意識障害とは、物事を正しく理解することや、周囲の刺激に対する適切な反応が損なわれている状態をさす。また、意識の構成は「清明度」、「広がり」、「質的」の3つの要素があり、「広がり」の低下(意識の狭窄)は、催眠、昏睡、半昏睡、昏迷、失神。 「質的」変化(意識変容)はせん妄やもうろう等を生じる。また、覚醒の座は、主座は脳幹網様体調節系にあるとされ、もうひとつ認知に関しては大脳皮質全体に存在すると言われている。意識障害の場合は、この一方ないし両方が損害されている。即ち、意識障害をみた場合は脳幹、大脳皮質、全身性疾患の3つを考えれば良い。 DLB に起きたせん妄例や、大脳皮質の例として、クロイツフェルト•ヤコブ病、全身疾患例として肝性脳症、大脳皮質と脳幹合併例として低活動性せん妄例のスライドが紹介された。ここで河野メソー
ドの考え方として、認知症を意識障害で二群に分けると、覚醒系認知症(ATD. FTLD)では抑肝散やニコリン注射への反応が無反応なのに対して、意識障害系認知症(クロイツフェルトヤコブ病、DLB、代謝•内分泌系認知症、脳血管性認知症)などは良好な反応を示す。このような観点から、具体的な症例が以下提示された。急激に悪化したATDへの対応として、1)新病変の検索、2)薬の副作用のチェック、3)診断の変更を掲げ、パーキンソン病(PD)の診断では、歯車様筋拘縮の具体的な調べ方、レビー小体型認知症 (DLB) の意識障害3態、各症例にニコリンを投与して劇的に改善したスライドが紹介された。なぜ DLB は劇的に改善するのかのスライドでは、DLB はATDと違い脳萎縮が軽いため、元々意識回復の実力を秘めていることが視覚的に示され、なるほどと納得させられた。意識障害を消すことがDLB治療のコツであるという河野メソードが披露された。結局、意識障害系認知症では中核症状や周辺症状に薬剤を投与する前に意識障害を覚醒させないと話にならないわけである。ここからは、ニコリン注射療法の実際の投与方法がスライドで紹介された。
次に、河野メソードの治療論が紹介された。脳萎縮は絶望ではないこと、誤った考え方は、周辺症状は、中核症状から派生したものだから、中核症状を治せば、周辺症状も消えるはず(アリセプト単独処方)であり、河野メソードでは、陽性症状をまず抑制系で落ち着かせてから中核症状改善薬を投入する。そのためには、今まで投与されてきたアリセプトをウオッシュアウトすること、抑制系を投入することが大事で、アリセプトを急にやめても脳内に17日間残るため、悪性症候群は起きないことが強調された。また、河野メソードでは家族にどうして欲しいかを聞くことが大事で、その具体作として、配布された資料コミュニケーションシートの利用を勧められた。ここからは河野メソードによる実際の症例がたくさんのスライドで提示された。その中から、アセチルコリンドーパミン天秤の概念やアリセプトとリスバダールをドパミン阻害ダブルバーガー称し、実際のハンバーガーをモチーフにしたスライドも提示された。また、健康補助食品として、NEWフェルガード(フェルラー酸+ガーデンアデリカ)の認知機能改善効果や、ルンベルクス•ルベルスの動脈硬化改善効果が紹介された。また、新薬紹介として、レミニール、メマリー、リバスタッチパッチに対する河野先生の評価が述べられた。最後に、1.一般医の認知症の参入は社会の強い要請、2.いわゆる専門医の医療レベルは、 惨憺たる状態である、3.薬物の種類、用量の規定は守るべからず、4.意識障害の解消なくして認知症治療は進まないことが、まとめのスライドで提示された。そして、名医への近道としてアリセプトを絞ること、ニコリン注射を多用することを掲げて、講演終了となった。以上、余りにも密度の濃い講演であったため、紙面では書ききれなかったが、詳しくは、河野先生の最新著書「高野メソードで見る認知症診療」(日本医事新報社)を一読されることをお薦めする。なお、この講演の感想を河野先生自身のブログ(http://dr-kono.blogzine.jp/ninchi/2012/10/)に掲載されておりますので、こ興味のある方は、このブログもご参照ください。
(要約 浜 直)