大阪府臨床麻酔科医会Award賞授賞式、会長賞の発表は
緊急事態宣言下のため、中止となりました。
【会長賞】
大阪大学大学院医学研究科 生体統御医学講座
麻酔・集中治療医学教室 助教 植松 弘進 先生
論文 :
A double-blind, placebo-controlled study of ultrasound-guided pulsed radiofrequency treatment of the saphenous nerve for refractory osteoarthritis-associated knee pain
Hironobu Uematu, Saya Hakata, Daijiro kabata, Ayumi Shintani, Daiki Kawazoe,
Kiyonori Mizuno, Yuji Fujino, Yoichi Matsuda
Pain Physicain 24(6): 761-769, 2021
抄録:
変形性膝関節症患者を対象に、超音波ガイド下伏在神経パルス高周波法 (PRF)に関する二重盲検プラセボ対照比較試験を行い、その有効性を検証した。膝関節内側前面に、3ヶ月以上続く、保存的治療に抵抗性で、中等度以上の痛みを有する膝OA患者を対象とし、PRF群とプラセボ群に無作為に割り付けた。PRF群には42℃以下で計8分間超音波ガイド下伏在神経PRFを施行し、プラセボ群にはシャム刺激 (3Hz 0.5Vの単刺激)を計8分間行なった。主要評価項目としてVASを、副次評価項目として膝関節可動域、Time Up and Go test、膝外傷と変形性膝関節症評価点数 (KOOS) を用いた。各項目を介入前と1、4、12週間後に測定し、群間比較を行なった。最終的に70名の患者が解析対象となった (PRF群37名、プラセボ群33名)。多変量線形回帰分析の結果、12週間後のVASについて2群間に有意差があった (p<0.05)。その他に有意差がある項目はなかった。また、知覚異常や筋力低下などの合併症は認められなかった。超音波ガイド下伏在神経PRFは膝OAにおける難治性膝痛を12週間軽減し、安全性も高いことが示された。
【奨励賞】
大阪医科薬科大学 麻酔科学教室 助教 佐野 博昭 先生
論文 :
Ehlers-Danlos 症候群患者に発症した脳脊髄液漏出症に硬膜外自家血注入療法が有効であった1症例
佐野博昭, 三井寛明, 南 敏明
ペインクリニック 41(8) : 1059-1062, 2020
抄録:
Ehlers-Danlos症候群(EDS)は遺伝性疾患で全身の結合組織の脆弱性を呈する。一方、脳脊髄液漏出症は脳脊髄液が漏出することで、起立性の頭痛や頚部痛の他、様々な症状を呈する。本症例は35歳の男性で、高校時代から繰り返す脱臼や皮下血種を自覚し、33歳でEDSと診断された。X-1年9月に無菌性髄膜炎を発症、診断のため髄液採取を施行された後より立位時の頭痛と後頚部痛を自覚した。保存的療法で一時改善したものの症状は遷延し、X年12月より立位時の頭痛、後頚部痛が増悪したため当科紹介となった.脳槽シンチグラフィ,CTミエログラフィにて,Th1/2,L4/5に髄液漏出像を認めた。2カ所それぞれに硬膜外自己血注入療法を施行したところ、症状の著名な改善を認め、その後も再発を認めなかった。本症例は首を頻回に鳴らす習慣があり、Th1/2での髄液漏出はその習慣が原因でEDSの脆弱な硬膜が損傷して髄液漏出を起こしたと考えられた。一方、L4/5での髄液漏出については、自然発症か、髄液採取時のものか、当院での検査時のものかは不明であった。
【奨励賞】
大阪市立大学大学院医学研究科 麻酔科学講座 講師 山崎 広之 先生
論文 :
Effects of polymorphisms in the serotonin transporter promoter-linked polymorphic region on postthoracotomy pain severity
Aya Kimura, Hiroyuki Yamasaki, Haruka Ishii, Hisako Yoshida, Motoko Shimizu, Takashi Mori
Journal of Pain Research 14:1389-1397, 2021
抄録:
痛みや鎮痛における個人差に遺伝的要因が関係する。本研究では、肺癌手術を受ける患者を対象として、術後急性痛から開胸術後症候群への移行とセロトニントランスポーター遺伝子プロモーター領域 (5-HTTLPR) の多型性 (SS型と非SS型) の関連性を前向き観察研究により検討した。各患者の遺伝子検査を行い、術後1日目から12か月目までの痛みスコア (NRS) を聴取し、混合効果モデルにより関連性を解析した。術直後から12か月目までの各時点でのNRS値および経時的なNRSの改善傾向についてSS型と非SS型に有意差は認められなかった。一方サブグループ解析では、硬膜外麻酔を併用しなかった場合SS型は非SS型に比べてNRSの経時的な改善が得られにくい傾向にあった。本研究から5-HTTLPR多型単独では開胸術後疼痛症候群発症の予測因子とはならないが、硬膜外麻酔の有無と遺伝子多型がNRSの経時変化に関与し、遺伝子型と麻酔方法が相乗効果として慢性痛への移行に影響している可能性が示唆された。